asondemita’s diary

micro:bit関連の事を書いていきたいと思います。CoderDojoつくばと守谷で子供達とプログラミングで遊んでいます。

学校の「机が狭い問題」を解決しないとGIGAスクールのPCは文鎮化する?

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 教育は門外漢ですが、一介の技術者として日本の将来のためにもGIGAスクールにはなんとか成功して欲しいと切に願っている一人になります。

 今回の提案は「机が狭い問題を子どもたちの手で解決しよう!」です。

 GIGAスクールについて文部科学大臣からのメッセージでは「PC 端末は鉛筆やノートと並ぶマストアイテムです。今や、仕事でも家庭でも、社会のあらゆる場所で ICT の活用が日常のものとなっています。社会を生き抜く力を育み、子供たちの可能性を広げる場所である学校が、時代に取り残され、世界からも遅れたままではいられません。」とあります。

社会のようにICTを日常的に活用する=PCは常時机の上に置いて子どもたちの意思で活用出来るようにする

が、目指すべき使い方だと思うのですが、大概この話をすると、そう思っている先生が少ないような気がするのですが、私が間違っていますでしょうか?

日常的に活用が出来ない物理的な問題

 学校には「社会のように普通に使おうぜ!」と言われても「そりゃー無理だよ」という物理的な問題があります。それは「机の狭さ」です。学校の机の天板サイズはJIS規格(S-1021)である程度が決まっていて、横450x奥行き650が主流(文部科学省調査結果)のようです。

  これは教科書・ノート・筆箱・PCを置いた時の写真です。 

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 これ、忘れて椅子を引くと体で教科書を押してPCを後ろに落としますよね? 一応、GIGAスクールで配布されるPCは、机の高さから落としても壊れにくい物が支給されると聞いていますが、これだと、

「PCがじゃま」「落とすと壊れる」

   ↓

「普段はキャビネットか机にしまいましょう」

   ↓

「子どもたちの意思で自由に使えない」「先生も出すのが面倒になる」

   ↓

「文鎮化」

というオチにならないでしょうか? 

  この解決策の一つがデジタル教科書なのかもしれませんが、聞こえてくる話だともうちょっと時間がかかりそうな感じを受けます。 

ダイソーの100円の板で文鎮化・破損を防ごう!

ネタっぽい見出しですいません(笑)

要は机が広くなり落ちなきゃいいんですよね?

 ダイソーで100円で売っているMDF板(400x300x6mm)があります。

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これを、レーザーカッターで切って、色々と遊んでみました。

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バリエーション

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どうでしょうか?

 色々とツッコミどころはありそうですが、これ、きっと子供たちに考えさせるともっと楽しいアイディアが出てきそうな気がしませんか?

 中学の技術家庭で本棚を作るのも良い経験だと思いますが、レーザーカッターを導入して「文鎮化」「破損」を防ぐにはどうしたらいいかを子供たちに考えさせ・デザインさせ・MyPCスタンドやプロテクターを作ってもらうPBLな授業(総合的な学習の時間になる?)は面白いんじゃないかと思う次第です。

 なお、私が遊びで作ったイラストレーターのデータ(かなり詰めが甘い)がこちら。 クリエティブ・コモンズのCC0で公開します。

レーザーカッターが扱える方は、是非これを超える楽しい作品を作ってみて下さい。

 

 追記:物理的解決だけでは文鎮化は解決しない

この投稿の後、多くの方から御意見を頂きました。有難うございます。

その中で、「環境的な支援も必要ですが、基礎スキルの全体的な向上と教育効果の価値づけが大切」と御指摘をいただきました。

仰る通りだと思います。文鎮化するかしないかについて、最後は先生方にかかっていると思います。

 

日本のICT教育の現場が駄目な方向に向かうのは日本人の遺伝子なのでしょうがない(?)

戯言

 以下は、門外漢の技術屋が、2年程、プログラミング教育に関わっている中で、脳科学中野信子さんのインタビューを読んで腑に落ちた一つの視点です。あくまでも飲み会の席での戯言だと思って下さい(笑

ICT教育って?

 プログラマーの世界で「ICT教育」なんて単語は使う事がなく、初めはすごく違和感のある単語でした。ただ、ある方に「特別な事をする訳ではありません。あなたが普段、普通に使っている環境を子供達が普通に使いこなせるようにするだけです。」と言われて納得。

ところが現場は...

 いくつかの公立学校にお邪魔してカルチャーショックを受けました。OSの多くはWindowsだったのですが、 - プラウザIEしか使えない - PCはメモリ不足で遅い - ソフトはインストール出来ない - ネットワークは遅くて動画は見れない(スピードテストで1Mbps以下) - セキュリティで見れないサイトばかり - Windows Updateはしてない - USBメモリは使えない - クラウド禁止 - 謎のタブレット信仰でキーボードとマウスが外され10インチの画面でドラッグ&ドロップ - 起動すると復元ソフトなる物が走るため起動に時間がかか - etc

 学校の多くの学校の先生方はこれが普通だと思っていて、不思議に思っていませんでした。

「これでどうやって普通に使いこなせるようにするICT教育って???」

なんでこうなっちゃったの?

 その後、さまざまの立場の方のお話を伺うと、仕方の無いと思える経緯も見えて来ました。 が、そんな中、私の中で腑に落ちている斜め上(笑)からの一つの視点があります。

脳科学者中野信子インタビュー - 新しいテクノロジーと向き合うために考えること - FQ (Future Questions) - Yahoo! JAPANfq.yahoo.co.jp

  • 日本人に怖いと感じる遺伝子を持った人が多い(怖がりにくい日本人は3%。アメリカ人は30%。)
  • 日本で新しいことを始めるのは難しい
  • 生き延びるためにプログラムされた正常な反応

この「怖いと感じる遺伝子」視点で見ると、

  • 学校のセキュリティがガチガチに向かうのは仕方が無い
  • 今度のGIGAスクールでも繰り返される可能性が高い
  • 日本人が新型コロナに対して真面目に頑張る人が多いのも納得
  • 日本初のイノベーションが少ないのも納得
  • 怖がりだからこそ品質の良い日本製品が生まれるのも納得
  • etc

日本人の「なんで?」と思うところが、いろいろと説明できそうに思っています。

そんな遺伝子が多い日本人でも多くの人がスマホに乗り換えられたのはナゼ?

 脳科学的に新しいことを始めるのは難しい日本人。でもちゃんとポケベル→ガラケースマホと変われました。これは何故なんでしょうか?中野さんは、インタビューの中で「新しいことを広めていくためには、みんなが使っている安心感やユーザビリティがポイント」と仰っています。

良い方向に持っていくためには?

  • 周りの市ではみんな導入しはじめたらしい(安心感
  • やってみたら意外に簡単で楽しい(ユーザビリティ

この2つが揃えば、スマホの普及の時のように臨界点(?)を超えられるんじゃーないでしょうか?

この後者の「ユーザビリティ」については、先生方・教育委員会文科省の努力でどうにか出来る問題ではありません。ユーザビリティ」は技術者たちの腕の見せ所じゃないかと。 技術者のみなさん、頑張りましょう!

以上、飲み会の席での戯言でした(笑

小学校プログラミング教育とmicro:bit ~これから学校のプログラミング教育現場と関わろうとする技術屋向け~

※この記事は、micro:bit Advent Calendar 2019 - Qiita の22日目として書きました。

 

以前、書いた記事 。

asondemita.hatenablog.com

 あれから1年半。気づけばプログラミング教育業界にどっぷり(^^)。現在は、本業(システム開発)の合間を縫いながら、全国各地を回り学校の先生を相手に micro:bit の楽しさや授業での使い方について、研修会や展示会を実施させて頂いています。

 正直、学校の先生にプログラミングを教えるより、子供達とプログラミングで遊んだ方が楽しい(^^)のですが、先生を1人プログラミングの世界に引きずり込めば、その先生の先には何百人もの子供達がプログラミングの楽しさを経験する事になります。とりあえず、日本のプログラミング教育の歯車が回り始めるまでは、微力ながら関わって行きたいと思っています。

 以下、これから、小学校のプログラミング教育現場と関わろうとする技術屋(プログラマー、他)の方向けにmicro:bitを軸に留意事項をまとめてみました。

が... そんな人、どのぐらいいるんでしょうか?(^^;)

 

 

1.プログラミング教育の手引

 これから関わろうとしている技術屋の方は、まずは、小学校プログラミング教育の手引 に目を通しましょう。技術屋から見ると、ツッコミを入れたくなるところが一杯あると思います。でも、ここは一つ、ツッコミを入れながら楽しく読みましょう(^^) これを読んでおかないと学校の先生方とは会話が成り立ちません。余力があれば、指導要領も関連する単元については目を通しておくと良いと思います。

 また、関わる地域で2020年に導入される教科書会社を把握しておきましょう。「教科書会社名 プログラミング」で検索すると、どんな切り口で書いてあるか窺い知る事が出来ると思います。

2.目線を相手に合わせ「楽しい」を伝える

  あたりまえですが、先生方の目線に合わせる必要があります。私も含め技術屋はこれが苦手な人が多いと思います。
 小学校段階では、プログラミングを学ぶのが目的ではありませんし、通知表の評価対象でもありません。まずは理屈よりプログラミングの「楽しさ」を伝えるのが重要だと思っています。また、この「楽しさ」を伝えるネタは、後日、先生が授業でも簡単に再現が出来るネタが好ましいと思います。

3.A分類6年理科「電気の利用」

 micro:bit は、多くの単元で活用できるシーンがあると思っています。ですが、小学校でmicro:bitを導入するきっかけとなるのが、例示*1とはなっていますが事実上のプログラミング必須単元、6年理科「電気の利用」です。これは、フィジカルコンピューティングの扉を開く重要な単元です。これまで使う側だった子どもたちが「自分でも作れるんだ!」という引き出しを持つ大切な授業だと思っています。

3.1.教科書と他の教材について

 2020年に向けて、「電気の利用」を行うための様々な教材が溢れているのが現状です。ですが、来年の新しい教科書に掲載が決定したのはアーテックのスタディーノとSonyのMESHの2種類だけです。教科書は何年も前から準備が進められるため、2017年に国内発売を開始したmicro:bitは間に合わなかった形となりました。

  大日本図書 啓林館 学校図書 信州教育出版 教育出版  東京書籍
教材 MESH アーテック
実回路の制御無し。ソフト上のシミュレートのみ。
アーテック アーテック ミニ信号機 MESH
制御対象 LED 電球 LED LED LED,モーター,オルゴール
制御方法 明るさセンサーを行った後に、明るさセンサー+人感センサー 明るさセンサー+人感センサー 明るさセンサー センサー無し。それまでの回路は使わない。信号機の再現。 明るさセンサーでLEDを制御した後は、モーターやオルゴールの制御。温度センサーも活用。
電源 電池 コンデンサ コンデンサ   コンデンサ
配線クリップ箇所 8 4 4    

ただ、文科省も教科書に載っている教材を使わなくても良いと言っています。

 教材としてはこの他に、LEGO WeDo、みんなのコード プログル理科、内田洋行 プログラミングスイッチ、スイッチエデュケーション いぬボード、スクーミー、BOSON、カシワニ、IchigoJamRaspberry PiArduino他、数多くの教材があります。

 私はmicro:bitが大好きなので、出来ればmicro:bitを使ってもらいたいと思いますが、無事、プログラミング教育の歯車が回るのであれば、何を使っても良いと思っています。

 なお、どの教材を導入するかは学校裁量となっています。 

3.1.1.「電気の利用」模擬授業体験イベント

 話が少し脱線しますが、先日、素晴らしいイベントがありました。

 技術屋的には「とりあえず、いろんな教材を試して比較してみればいんじゃない?」と思うのですが、先生方はそう簡単ではありません。

  • 学校側で買ってもらう事が簡単には出来ない。(熱い先生の多くは、自費で買っています...)
  • 入手出来たとしても忙しくて比較している時間が無い。
  • 時間が作れたとしても、判らなかった時に助けてくれる人がいない。

先日、この問題に対して、有志の先生方が立ち上がり、素晴らしいイベントが開催されました。

typet.jp

このイベント、学期末が押し迫った日曜日にも関わらず、自腹を切って全国から約200名の学校の先生が集結しました。

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日本の先生方も捨てたもんじゃー無いです。

 

3.2「電気の利用」のポイント

6年理科理科「電気の利用」の指導要領解説について、平成29年告示で追加されている部分を抜粋してみました。
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授業の展開方法については、技術屋のみなさんや先生方によって、考えが分かれるところだと思いますが、展開方法に正解は無いと思っています。

私が電気の利用の組み立てで心がけているのは、

  • 初めて思い通り動いた瞬間の感動をみんなで分かち合う
  • 身の回りの物がブラックボックスではなく、どんなプログラムで動いているか、子どもたちが想像出来るようにする

 の2点です。

以下、身の回りの物の例です。

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こうして見ると、micro:bit本体の明るさセンサーだけだと出来る事は少ない事に気づきます。出来れば人感センサーも用意してあげたいところです。

 なお、予算の関係で人感センサー(赤外線センサー、距離センサー等)が購入出来ない場合のアイディアを2つ。

  • 100均で売っているビームが出来るLEDライトで代用が出来ます。LEDライトの光をmicro:bitに照射します。人が通過するとこの明かりがカットされるように設置をすれば人を検知する事が出来ます。
  • 板2枚+窓の隙間貼りテープ(もしくは厚めの両面テープ)+アルミホイル+ミノムシクリップケーブルでマットスイッチを作ります。人が踏むと2枚の板に貼り付けたアルミホイルが接触。アルミホイルに取り付けたミノムシクリップを通じて、P0とGNDが接続されるようにすれば人を検知する事が出来ます。

いずれも立派な人感センサーです。一点、前者は、省エネの単元なのにLEDライトがつけっぱなしなのがツッコミどころだと思います(^^)

 あとは、ある小学校の先生が実践された授業なのですが、micro:bitが1セットしか無い中、基本、MakeCodeのシュミレータだけで授業を行い、班ごとに発表。優秀作品を先生のmicro:bitにインストールして、みんなで動作確認をするという組み立てです。これはこれで、ダウンロードのトラップで授業が頓挫する事もありませんし、選ばれた子供は一生忘れない思い出になるかもしれません。コストをかけない授業のアイディアはいっぱいあると思います。

4.micro:bitを学校で使う場合の注意点

学校現場には企業の論理では理解が出来ない事が一杯あります。以下は、私が環境が判らない現場にmicro:bit一式を持ってお邪魔する前に、必ず聞くインタビュー項目です。

  • 端末環境の確認
    • Windowsの場合
      • USBメモリが許可されているか?
        • これだ駄目だとmicro:bitが使えません
        • 申請を出せば、事前に特定のmicro:bitだけ許可してもらえる事もあります
      • 空いているUSB-Aポートがあるか?
        • Windowsタブレットの場合、USB-Cだったり、既にポートが埋まっている事があります。必要に応じてUSBハブを用意する必要があります。
      • デスクトップPCの場合、机の上置きか、机の下置きか? 
        • 用意するUSBケーブルの長さが変わります
      • WebUSBが使えるか?使えなければWindows10 makecode アプリが入れられるか?
        • micro:bitでの躓きポイントは「ダウンロード」です。時間が限られている公開授業や研修会では、出来ればワンクリックでインストール出来る環境を整えたいところです。
        • ちなみに2020年1月にリリースされる予定の新しいMicrosoft Edgeは、WebUSBが使えます。
    • iPadの場合
      • micro:bitに電源供給する方法(電池ボックス or USB ACアダプタ)があるか?
      • iOSmicro:bitアプリは最新か?
        • 古いmicro:bitアプリが入っているとペアリングで頓挫する可能性があります。
  • 既存教材の確認
  • ICT支援員の有無の確認
    • 公開授業等でICT支援員が張り付いてくれる場合は、予め支援員の人に相談をしておいたほうが良いと思います。 

5.現場への関わる場合の留意点

私の少ない経験を元に、シチュエーション別にまとめてみました。

5.1.教育委員会の研修会や有志の勉強会での講師

 やる気のある先生がやってきます。スキルもある程度高い先生の集まりである事が多いので、教えるのはとてもやりやすいです。私の失敗としては、はじめの頃、技術的な事を一杯話し過ぎてしまいました。また、職業病で、企業間のプレゼンノリで時間いっぱい喋りまくってしまいました。ある先生から、「一方的に話すのではなく、先生方に考えさせてアウトプット(書いてもらう、作ってもらう、班で相談してもらう、発表してもらう、etc)する時間を作る事が大切」だとアドバイス頂きました。

5.2.プログラミング推進校のサポート

 各地域にプログラミング推進校というのがあります。プログラミング推進校は各種教材の研究を行い、最終的には、近隣の小学校の先生方のお手本となるような公開授業を行う事になります。アサインされている担当の先生は、その学年でエース級の先生だったりするのですが、公開授業を見に来る先生の中には、プログラミングが苦手な先生方も含まれています。私個人の主観ですが、担当される先生は、欲張りたくなる傾向があるように思います。プログラミングが苦手な先生が見ても「これなら私にも出来る」と思ってもらえるような授業になるよう、関わる技術屋の人はサポートする必要があります。

5.3.校内研修・xx部会での講師

 プログラミングが苦手な先生が多く含まれています。プログラミング的にも電気的にも正しさを保ちつつ、徹底的にハードルを下げて、動いた時の感動体験に持っていく必要があります。一番、難しい現場ですが、やりがいのある現場でもあります。意外に苦手な先生程、動いた瞬間にいいリアクションをしてくれたりします。(^^)
 

5.4. 子どもたちへの授業

 個人的には一番、楽しい関わり方なのですが、これはお断りをしています。先生は楽が出来ますが、私が去った後、継続がされません。プログラミング教育の歯車を回すには、先生のスキルアップをお手伝いするのが私の役割だと思っています。

 

6.教科担任制の動き

先日、こんなニュースがありました。

www.nikkei.com

賛否両論あると思いますが、現場の現状を考えると致し方ない気もします。小学校プログラミング教育の歯車が回り始めるのは、実は2022年なのかもしれませんね。 

7.終わりに

 指導要領を見ると、私が受けてきた教育とは大きく転換しようとしている事が判ります。30年以上プログラミング業界に携わってきて思うのは、「日本にとってこれが最後のチャンスなんじゃないか」って思うんです。技術屋の皆さんの力が、今、教育の現場で必要とされています。

 最後、ちょっとCMになります(^^)。「技術屋だけどいきなり学校にコミットなんか無理だよ」という事であれば、 お近くのCoderDojo https://coderdojo.jp/ のボランティアから初めてはいかがでしょうか?学校でプログラミング教育がスタートすると、「もっとプログラミングをやりたい!」という子どもたちが一定量、出てくると思います。この子どもたちの受け皿は学校では時間的にも無理です。参加費無料で全国に約200箇所あるCoderDojo は F分類の受け皿として、大切な役割を担っていくと思っています。

 以上、まとまりの無い長文、最後まで読んで頂き有難うございました。

 

*1:他の教科・単元、例えば算数6年の「拡大図と縮図」でScratchでやっても良いそうです

256日後の約束の授業

 昨年の5月末。「なんでmicro:bitを日本の小学校の先生は知らないのか」かとボヤキながら書いたこのブログ。

asondemita.hatenablog.com

これに対して、当時、こんなコメントをくれた一人の先生がいました。

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このコメントにはとっても勇気づけられ、「ボヤいていてもしょうがない。自分が学校に広めるしかない。」という決意に繋がりました。

 この後、micro:bitを日本の教育現場に広めるべく、ハード開発・ソフト開発・本の出版・取材記事執筆・公開授業の参観・教材の開発・先生向けの講習会の開催と、ひたすら走り続けることになります。

 そして、このコメントから256日後の今日、こんなブログがアップされました。 

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実は、すずすけ先生からこの約束の授業を生で拝聴させて頂く機会を頂きました。

 私は一介の技術屋です。難しい教育論は良く判りません。ただ、日本の教育現場にmicro:bitを広めたい一心で手がけたハードウエア達が、すずすけ先生の指導で確実に昇華出来た瞬間に立ち会う事が出来ました。授業が終わった後、子供たちから聞こえた「えーもうちょっとやりたい」「楽しかった」という声、動いた瞬間のキラキラとした目の輝き、すずすけ先生が書かれたブログは私の宝物になりました。有難うございました。

 なお、この一年で多くの方の尽力により、小学校ではmicro:bitが広がりを見せ始めているのを、肌で感じられるようになってきました。

 

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 はい。私も新たにスタートします。

 次は中学の技術家庭でのmicro:bitの普及に、微力ながら尽力して行きたいと思っています。プログラミングの授業について、中学校は小学校よりさらに残念な状況になっていると思います。もし、中学校の技術家庭でmicro:bitを広めたいと思っている先生、いらしゃいましたらお知恵を貸してください。よろしくお願いします。

 

 

日本でも動きが始まったmicro:bitの無償提供

ict-enews.net

 

 日本でもようやく始まりました。良かった、良かった。2000円×20個×100校=400万円は、安くて効果の高い寄付だと思います。一点、イギリスでの反省を活かしたソフトのケアがどこまで行われるのかが気になります。

 国内でWDLCのような動きがもっと出てくる事を期待しています。

 

 

Scratch Day Kashiwaでmicro:bitのTouch&Tryを開催

 

 6月10日(日) に開催されるScratch Day Kashiwa 麗澤大学)でTouch & Tryを担当する事になりました。
 内容としては、子供たちには2人ペアになってもらい、引いたカードの指示書に従いmicro:bitの送信側と受信側の簡単なプログラム(10ブロック以下)を作ってもらいます。

送信側カード

  • 海賊の宝石箱を開けたら通知
  • ナーフ(銃)の弾丸が的にあったったら通知
  • 人が通ったら通知
  • ライトセーバーを振ったら通知

受信側カード

  • 通知を受けたら音楽が流れる
  • 通知を受けたら家の電気を点ける
  • 通知を受けたら輪ゴムを発射

組み合わせによって、出来上がる物が異なる体験(10分程)となっています。

時間があれば、お題も考えて工作をするものづくりも体験してもらいたいところなのですが、Touch & Try なので一人でも多くの子供達にmicro:bitを触ってもらおうと思います。

また、この他に、CoderDojo守谷メンターによるscratch+micro:bit連動作品の展示も行います。

よかったら、遊びに来て下さい。

時間が作れれば、結果をレポートしたいと思います。

 

 

micro:bit(マイクロビット)を使った「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」A分類(区分)6年生理科の作成例

 去る5月20日に開催されたシンポジウム「東京大学情報学環プログラミング教育シンポジウム Micro:bitを使ったIoTプログラミング教育」に参加させて頂きました。

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この際、「小学校プログラミング教育の手引(第一版)」で言うところのA分類の作成例を幾つか展示をさせて頂いたのですが、御覧頂いた方より「ネット上には公開しないのですか?」と言われました。取り急ぎ、展示した6年生理科の作成例について、ここに記そうと思います。

 なお、私は学校教育は専門外になります。もし間違った事を書いていたら御指摘頂ければ幸いです。 

 

1.micro:bitが小学校の授業に適している9つの理由

私なりに理由をまとめてみました。

理由1. ビジュアルが学習にうってつけ

 「身の回りでプログラムで動いている物を分解すると基板という物が中にはいっていて、CPUと呼ばれる・・・」という仕組みを学ぶ中で基板剥き出でCPU搭載のmicro:bitはビジュアル的に説得力があります。

理由2.導入が簡単

 ブロックによるプログラミング環境が提供されているので「プログラミングはちょっと・・・」という先生でも1時間もあれば使えるようになります。また、先生が授業の前にハードウエアを組み立てたり、予めパソコンになにがしかの設定作業をしなくても、すぐに使う事が出来ます。

理由3.環境を選ばない

 多くの小学校のPCは、セキュリティ対策で先生と言えども勝手にソフトがインストール出来ないようになっていますが、そのような環境でも問題ありません。ブラウザとネットワークさえあればあらゆる環境からすぐに始められます。

理由4.授業中の想定外のトラブルが少ない

 各種センサー(加速度・地磁気・温度・明るさ)・入出力端子・25個のLED・Bluetoothが搭載されているので、特別な組み立てやブレッドボードを使わずに多くの事が出来ます。結果、授業中の想定外のトラブルを抑える事が出来ると思います。

理由5.少ない予算で導入が出来る

 各種センサー・LED・Bluetoothを搭載しているのに、定価2,160円という価格は、2020年に向けてプロモーションが行わている教育用デバイスの中では最もローコストな部類に入ると思います。

理由6.安心して導入が出来る

 国内では認知度が低いmicro:bitですが、既に世界で170万個が販売され多くの子供達がmicro:bitを使って学んでいます。さらに、オープンハードウエア(設計図が公開されており他の人が同じ物を作る事が出来る)且つマイクロソフトが関わっているという背景から、当面は「学校で導入してすぐに製品が販売終了になり入手ができなくなった」「ソフトの更新が止まりOSのアップデートが出来ない」「維持するために有料保守を受け続けなければならずコストがかかる」という心配は無さそうです。導入を決断した人が、後日、責められるような事は無いと思います。

理由7.micro:bit本体が無くても自宅で続きが出来る

 ブラウザベースのシミュレータが良く出来ており、micro:bit本体が無くてもブラウザだけで動作確認が可能です。すなわち、子供達が自宅に帰ってスマホ・PC・タブレット等からmicro:bit無しで続きをする事も出来ます。共有機能を利用すれば、URL(13桁の文字列)で宿題にした作品を提出してもらう事も可能です。

理由8.子供達や先生が混乱する事無く発展が期待出来る

 2018年5月の時点では正式リリースとなっていませんがScratch3.0もmicro:bitと同じくGoogleBlocklyで開発が進められています。そのためブロック操作については共通性があります。片方をマスターした子供達は、もう片方をマスターするのにさほど時間がかからないと思います。また、Scratch3.0は接続できる外部デバイスとしてmicro:bitが標準サポートされる予定です。単元毎に異なるプログラミング道具を使う事になってしまうと先生も大変になります。また学校裁量とはなっていますが、学校毎に異なるプログラミング道具を採用してしまうと、異動になる度に新しいプログラミング道具を覚えなければならなくなります。若い先生はなんとかなると思いますが、年配の先生は異動する度に苦労をする事になります。プログラミングの道具はなんでも良いと思いますが、個人的にはソフト系の道具はScratch3.0とハード系の道具はmicro:bitで統一すると、現場は混乱する事無くB,C,D分類へのスムーズな道筋が描けると思います。

理由9.興味のある子どもは、本格的なプログラミングへ

 micro:bitは、ブロックでのプログラミングだけでなく、本格的なプログラミング言語javascriptpythonへの動線が用意されています。興味のある子どもは、本格的なプログラミングへと進む事も可能です。

 

2.なぜ小学校の先生はmicro:bitを知らないのか?

 先日の東京大学越塚教授主催のシンポジウムで、お話をされた富谷市立富谷小学校の金洋太先生が実践されたお話(参考)は非常に参考になりました。おそらくあの会場にいらした方は「micro:bitの未来は明るい」と確信したと思います。
 ところが、実際の現場は全く異なるのが実状のように感じています。ある小学校に行ってみると、教材会社から届いている2020年に向けた大量のパンフレットの山の中にmicro:bitはありません。何人かの小学校の先生に「micro:bitを知っていますか?」と聞いてみたのですがみなさん知りませんでした。(教材会社の教材がダメという意味ではありません。micro:bit以外にも素晴らしい教材が一杯あります。)

 私は、micro:bitは安すぎてビジネス商材にならないのが原因の一つになっていると思っています。以前お伺いした輸入代理店の方のお話ではmicro:bit財団側の意向で金額が抑えられているとの事でした。

 どうしたら、多くの先生に、この素晴らしいmicro:bitの存在を知ってもらえるのか。。。良い知恵をお持ちの方、いらっしゃいましたらアドバイスを頂ければ幸いです。

 

3.導入にBlockly Games

 相手が数人ならプログラミングが完全に初めての子供達にいきなり触らせてもなんとかなるのがmicro:bitなのですが、30人以上になると先生1人では大変です。

  これはある先生から教わったのですが、先生・生徒の双方からBlockly Gamesが大好評なんだそうです。

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これは、ゲームをしながら「ブロックの操作」「ループ」「分岐」を学ぶ事ができるGoogleが開発したサイトです。

  • 先生は何もする必要は無い(よーいどんと言って、後は見てるだけ)
  • ブラウザさえあればOK(ソフトのインストール不要)
  • code.orgより短時間で出来る

等のメリットがあります。

もしプログラミングの導入としてBlockly Gamesを行う場合は、全部攻略する必要はありません。「迷路」の1~7を攻略してもらえればmicro:bitやScratchの導入としては十分です。

 注意点として、Windowタブレットで行う場合は、

  • タッチを使いたい場合は、ChomeもしくはFirefoxを使う
  • EdgeもしくはIEを使う場合は、マウスで操作してもらう

という形で実施していただいた方が良いようです。(誤動作の可能性アリ)

なお、 余談ですが、Blockly Games,micro:bit,Scrtach3.0,code.org、何れもGoogle Blocklyをベースとして作られています。

4. 第6学年 理科 物質・エネルギー 電気の利用

 私が教育の専門家で指導案がスラスラと書ければ良かったのですが、そうではありません。以下は、あくまで作成例止まりとなっています。単元としては、発電機で蓄電した電気を使って、豆球とLEDのどちらが省エネかを学んだ後の授業を想定しています。 

4.1.暗くなったら自動点灯(明るさセンサー+外付けLED)

 micro:bit本体の明るさセンサーを使い、街路灯(防犯灯)の様に、プログラムで暗くなったら点灯。明るくなったら自動的に消灯する節電装置を作ります

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https://makecode.microbit.org/_YghEqoUtJLst

 手でmicro:bitを暗くするとLEDが自動点灯します。 

※抵抗入りLEDではない場合は330Ω程度の抵抗を直列に接続する必要があります
※実際の街路灯はプログラムではなく明るさセンサー+電子回路で実現をしています。

4.2.光る明るさを自動調整(明るさセンサー+内臓LED)

  液晶ディスプレイを持つ製品(テレビ、スマートフォン、他)には、回りの明るさに合わせて輝度を自動調整し、無駄な電力を抑え、見やすくする仕組みを持つ製品があります。micro:bit本体の明るさセンサーと内臓LEDを使い、まわりの明るさに合わせてLEDの輝度を自動調整する節電装置を作ります。

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https://makecode.microbit.org/_7ar00aME5HMH

 常時ハートの表示が出ていますが、手をかざして暗くすると内蔵LEDも暗く光るようになります。 

4.3.一定時間操作が無ければ消灯(内蔵ボタン+内蔵LED)

  スマートフォン・パソコン・ゲーム機・自動販売機の夜間の商品照明などで、一定時間操作がなければ、節電のためにスリープ(消灯)する仕組みがあります。micro:bit本体のAボタンを使い一定時間ボタンが押されなければ、消灯する節電装置を作ります。

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https://makecode.microbit.org/_JuLKHMKaciLo

このプログラムは、

  • 変数(値を覚えておく仕組み)の説明が必要となります
  • micro:bitの時間がミリ秒という単位なので子供達に教える時に補足が必要となります。

4.4.急加速をしたら警告(加速度センサー+外付けLED)

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 こちらは切り口を変えて電気の節約ではなく、ガソリンの節約装置になります。急加速は安全上の問題だけでなく燃費低下につながります。最近の多くの車に、エコ運転かどうかの表示機能が搭載されています。

 ここではmicro:bitの加速度センサーを使って急加速の場合はLEDで警告する装置を作ります。

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https://makecode.microbit.org/_AFD3ksi4KYjr

 1.5G以上の加速をすると警告ランプが点灯します。

4.5.ドアが開いた時だけ一定時間LEDが光る(地磁気センサー+外付けLED)

 ドアが開いた時だけ一定時間LEDが光る節電装置を作ります。micro:bit+磁石は様々な応用で使えるのですが、

キャリブレーションをしなければならない(サークルを描く初期化作業が発生)

・検出プログラムが多少トリッキーになる
になるので難易度は高めの作例になります。

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この写真だと判りにくいですが、扉側にマグネット板が両面テープで貼り付けてあります。扉を開けた際の磁力変化を使って開閉を検知します。

 

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 https://makecode.microbit.org/_h3d0evREpf38

作成例として展示しておきながら申し訳ないのですが、このプログラムを子供達に説明するのは、難しいかもしれません。(なぜ磁力の値で判定してはいけないのか。絶対値とは何か。なぜ0.125を掛けるのではなく8で割っているのか。)

 アイディアとしては、「xxxセンサーの変化がxx%以上あったらば真」という判定を行うブロックを追加パッケージとして作れば、子供達も簡単にこの手の作例を悩まずに作れるようになると思います。

4.6. 暑くなったら送風を行う(温度センサー+ソーラーモーター)

 常時送風をするのではなく、micro:bit内蔵の温度センサーと連動させて暑くなった時だけ送風を自動で行う装置になります。

 ソーラーモーターは少ない電流で駆動できますが、それでもダイレクトに制御することは出来ません。どうしても回路が必要となります。こちらも、作成例として展示しておきながら申し訳ないのですが、ブレッドボードを使わなければならないので、短い授業時間の中では、難しいと思います。

 

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https://makecode.microbit.org/_15CJ0tUgu2AD

 このプログラムは27度を超えるとモーターが回転します。展示ではドライヤーで温める形で体験していただきましたが、27度ぐらいだとCPUのところを手で暖める形でも達する事が出来ます。なお、マイクロビットの温度センサーはCPUの温度センサーをつかっているため、実際の気温より数度は高めの値となります。

4.7.人が来たらモーターを動かす(明るさセンサー+サーボモーター)

 エスカレーターや動く歩道で、人が来たのを検知すると一定時間だけ稼働するタイプがあります。これをLEDライト+明るさセンサーおよびサーボモーター(連続回転サーボ)を使って作ってみます。

 

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連続回転サーボにはFEETECH FT90Rを使っています。電源は別の電池ボックスから供給します。(micro:bit本体の3V端子は定格では90mAとなっており、サーボモータを駆動するには不十分です。micro:bit財団の作例に3V端子を使っている例がありますが、財団のエンジニアも不十分である事を認めていました。)

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https://makecode.microbit.org/_6e3MMfDtuVLf

 

LEDライトの光を遮ると5秒間モーターが回転します。

こちらも、作成例として展示しておきながら申し訳ないのですが、かなり工作に時間が取られてしまうので、短い理科の時間の中で行うのはお勧め出来ないかもしれません。

 

以上、このページが検索にひっかかり、一人でも多くの先生がmicro:bitの素晴らしさに気づいて頂けたら幸いです。